研究課題/領域番号 |
22570117
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
青山 浩 大阪大学, 薬学研究所, 准教授 (60291910)
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キーワード | 構造生物学 / X線結晶構造解析 / 膜タンパク質 / 脂質代謝 |
研究概要 |
グリセロホスホジエステルホスホジエステラーゼ(GDE:EC.3.1.4.46)は細胞膜のリン脂質がホスホリパーゼによって脱アシル化反応を受けて生じたグリセロホスホジエステルをアルコールとグリセロール-3-リン酸に加水分解する酵素である。近年哺乳類のGDEの存在が確認され、ヒトやマウスには少なくとも7種類の酵素が存在することが明らかとなっている。また、マウスではGDE5以外は膜貫通タンパク質であると予測されている。 マウスGDEのcDNAのC末端にヒスチジンタグを付加し、昆虫細胞(Sf9)にバキュロウイルスを用いて発現させた後、ニッケルカラムとゲルろ過カラムにより精製を行った。これまでに、膜貫通タンパク質であるGDE1、GDE4及びGDE7、可溶性タンパク質で分子量6万5千のGDE5の発現・精製に成功した。 この中で2回膜貫通タンパク質であるGDE1の結晶作製にも成功したが、精製標品の安定性、結晶の母液に対する安定性に問題があったのでその克服を目指した。 精製後、数日間で結晶化能が消失する問題に関しては、結晶化直前にゲルろ過カラムを繰り返し行うことで、凍結後の標品でも結晶作成が可能であることがわかった。 また作製直後の結晶は母液添加に極めて不安定であったが、数ヶ月後静置しておいたものは安定であった。そのため結晶の脱水処理が有効であると考え、Paraton-Nを用いることで、X線回折能を有すること確認した。Paraton-Nの粘性と視認性の悪さを克服するために、流動パラフィンとの混合比を調整し最適化を行った。さらに、このような取扱困難な結晶に対応するために、母液なしでの結晶マウント、常温でのX線回折実験、キャピラリー中での結晶化といった新たな技術導入を行い、予備実験を終了した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
GDE1の結晶を再現性よく作製できる条件は見つけ出したが、精製標品の長期保存の不可、結晶の母液に対する不安定性の問題が発生し、新規技術の導入が不可欠となったため。
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今後の研究の推進方策 |
これまでは連携研究者から精製標品を郵送することで実験を行っていたが、研究代表者自身で精製できる環境が整い、実際に精製が行えることも確認したので、結晶化に適した安定な標品の大量獲得が可能になった。 また結晶の取扱方法についても、新規技術の導入・予備実験は終了したので、次年度に向けて、X線回折データ収集・構造解析が出来る準備が整った。
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