研究概要 |
本研究では大腸菌由来シャペロニンタンパク質GroELのサブユニットドメイン構造に注目し,ドメイン間情報伝達機構と機能との関連を解明することを目標とする。具体的にはGroELサブユニットに円順列変異法を適応し,ドメイン同士の連結を切断した場合に機能に及ぶ影響を詳細に解明する。研究開始時にGroELの円順列変異体を3種類作成し,変異体の機能が野生型と定性的に異なることを確認した。平成22年度の研究計画では,これらの円順列変異体のN末端とC末端にシステイン残基をそれぞれ導入し,円順列変異で切断したドメイン間の連結をジスルフィド結合で再び繋げる様に加工した。ジスルフィド結合を用いてドメインの連結が機能メカニズムにおよぼす影響を比較・評価することを目指した。 平成22年度の研究成果として,予定していた3種類の円順列変異体のうち2種類,および新たに作成した円順列変異体1種類の合計3種類について,それぞれN末端とC末端にシステインを導入することに成功した。さらに,その中の1種類の円順列変異体(CP86変異体)については,ジスルフィド結合を形成してドメイン間を連結させるとATP加水分解活性やタンパク質フォールディング補助機能が野生型GroELの機能に近づくことを確認した。ジスルフィド結合の導入により,CP86変異体の機能的性質を野生型GroELのものに「復活」させたという今回の実験結果は,GroELサブユニットにおけるドメイン間の連結様式が機能発現にきわめて重要であることを証明するものである。平成23年度以降の実験ではこの変異体に蛍光プローブを導入し,変異体の動的構造変化をストップト・フロー法で直接解析することでジスルフィド結合が分子運動に及ぼす影響を詳細に解明する。
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