研究課題/領域番号 |
22570121
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研究機関 | 京都府立大学 |
研究代表者 |
織田 昌幸 京都府立大学, 生命環境科学研究科, 准教授 (20318231)
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キーワード | 分子認識 / 生体分子 / 蛋白質 / 分析化学 / 免疫学 |
研究概要 |
試料調製にあたり、Hen Egg Lysozyme(HEL)の各S-S結合を欠損させた4種類の変異体の調製に成功したが、NMR測定ラベル化試料用としての効率的調製に難航しており、さらに大腸菌発現後の巻き戻し効率の改善が必要となっている。一方、化学修飾や熱処理したHELやovalbumin(OVA)の調製は予定通り成功した。また抗体のsingle-chain Fv(scFv)について、HEL同様に巻き戻し効率のさらなる改善は必要なものの、表面プラズモン共鳴(SPR)解析には十分な精製タンパク質を得ることができた。質量分析法による抗体のエピトープ解析について、一連の実験条件を確立できたので、平成24年度には、モデル系となる抗原抗体複合体に適用する。抗原抗体間相互作用について、主にSPRと等温滴定型熱量計(ITC)を用いた解析を行い、特に各種HELと4種類の抗HEL抗体(ハイブリドーマ細胞から調製)との結合で、興味深い知見が得られた。その1つとして、酸性条件下で熱変性処理したHELとの結合は、未処理HEL結合に比べて、結合エントロピー量が不利に働いたことから、HEL中での揺らぎの程度の違いが示唆された。さらに同処理したHELの結晶化に成功し、X線構造解析を行ったところ、Asp101とGly102の間のペプチド結合部位に違いが認められた。今後はさらに、同抗体のエピトープ解析と並行して、立体構造と結合熱力学量や速度論量との相関を明らかにしていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
HEL変異体の大量調製に難航しているものの、熱処理HELの立体構造や分子間相互作用解析において、興味深い知見が得られたことから、全体としては「おおむね順調に進展している」と判断される。
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今後の研究の推進方策 |
HELやOVAの各種変異体や化学修飾体と、抗体との分子間相互作用解析を行い、各抗原の立体構造情報と結合速度や熱力学情報とを相関付け、特にタンパク質の動的構造変化の解明を目指す。さらに抗体のscFvを利用して、高速X線1分子追跡法やthree pulse photonechoshift測定なども行い、抗原結合に伴う各抗体の動的構造解析を行う。
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