研究課題
NADH:ユビキノン酸化還元酵素、(以下複合体I)はミトコンドリア呼吸鎖の最上流部に位置し、NADHからユビキノン(Q10)へと電子を伝達すると共にプロトンを能動輸送する巨大な複合体である。反応機構を解明するためには本酵素の疎水部を含む全立体構造及び活性中心付近の詳細な構造を明らかにする必要がある。ウシ由来酵素の全立体構造解明のために、本酵素が巨大で電子顕微鏡で観察可能である利点、及び脂質膜中で構造が長期間安定に保持される性質を利用し2次元結晶化条件の検索を行いながら3次元結晶化を行う。構造解析を進めるとともに振動分光学的手法(ラマン、赤外)を用いて活性中心周辺の詳細な立体構造を解明し、反応機構を明らかにすることを目指す。本酵素は脂質膜中で安定であることから2次元結晶からも高分解能データの収集も可能と考えられる。そのためには『広い面積(2mm2以上)』で『結晶性高い』2次元結晶を『高頻度』に、また『再現性よく』得る必要がある。脂質の種類、脂質と酵素を可溶化するための界面活性剤の種類と濃度、透析外液の組成、温度等の種々の条件を組み合わせてどの条件が最も本酵素の2次元結晶化に適しているかを詳細に検討し選択した。ホスファチジルコリンを4mg/mlで、溶解に用いるコール酸濃度を0.5%以下となるようにし、結晶化温度を15℃とすることで結晶化の再現性は格段に改善された。まだ、1つの視野内に認められる結晶の頻度にはまだ問題があるが、本年行った検討の結果、回折データの収集が可能な2次元結晶が再現性よく得られるようになった。共鳴ラマン分光法を本酵素に適用し、これまでに酸化型酵素のラマンスペクトルにFMN及び鉄硫黄クラスターのラマン線を精度よく確認できるようになった。本年は更に酸化還元や阻害剤結合にともなう変化を捉えることを試みる。
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