研究課題
本研究では、過去7年間に取得した糖鎖特異的ヒト型単鎖抗体(scFv)の精製と詳細な構造及び結合性解析を目的としている。ヒト型抗体はがんを含む様々な病の分子標的治療に有用である。糖鎖は、がんの転移や浸潤、細菌やウイルスの感染症などに関わっていることから、その抗体取得は治療薬開発用に嘱望されるところだが、糖鎖は自己抗原である為、高い親和性を有する糖鎖に対するIgGは生体免疫では得がたかった。申請者は、ファージディスプレイ法による生体外でのヒト型抗体の作製を提案し、10^<-9>オーダーの高い結合性を有する抗Man3抗体及び抗Le^X抗体の作製に成功したが、その過程で様々な問題点が明らかになった。本研究は、困難であったscFvの大量調製に向けてリフォールディング法を改良し、T-抗原scFvsの大腸菌での大量発現・精製に成功した予備実験を元に、以下の研究を実施する。(目的1)抗T-抗原scFvsの大量調製と糖鎖結合性解析。(目的2)抗Man3、抗Le^X scFvsの大量調製と糖鎖結合性解析。本研究は抗体医薬創成を長期目標とした基礎研究と位置付けられる。糖鎖親和性に加え、さらに、糖鎖特異性をSPR解析・糖鎖マイクロアレイなどで詳細に検討し、抗Man35A3と抗Le^X 1F12scFv-Fcは細胞外に分泌されるが、抗Man3 1A4&1G4及び抗Le^X 3F1 scFv・FcはERに滞留する原因解明に迫る。最も研究する意義のあるクローンについて、研究連携者の山口芳樹博士のグループに精製単鎖抗体を提供しNMR解析を進める。(目的1)抗T-抗原 scFvsの大量調製と糖鎖結合性解析の方法論を確立した。(目的2)目的1で達成された大腸菌での大量発現・精製法を応用し、抗Man3 5A3,1A4&1G4 scFvs及び抗Le^X 3F1&1F12 scFvsの発現・精製実験を進めた。
2: おおむね順調に進展している
目的1に記載された抗T-抗原 scFvに関しては、昆虫細胞発現系の結果と合わせて原著論文とするとしているが、目的2の抗Man3 scFvsの大量調製と糖鎖結合性解析結果を原著論文として報告した。さらに、本研究の応用として、抗Tn.抗原モノクローナル抗体MLS128のVL/VHドメインのクローニングとをのscFv化・大量調製と糖鎖結合性解析を達成し、原著論文として報告した。
グアニジン塩酸で変性したまま単鎖抗体を精製し、活性を戻すという初期の計画は上記のように一定の成果を収めたが、この方法では、変性剤を除いた後に凝集しやすいなどの不都合がある。そこで、昆虫細胞発現系での可溶性のままの発現路精製と、グアニジン塩酸より良い結果が予想される別の変性剤の使用による封入体からの調製を検討している。MLS128scFvに関して、Tn-抗原結合性のNMR解析に顕著な成果が見られた。引き続き、研究連携者の山口芳樹博士のグループに精製単鎖抗体を提供しNMR解析を進める。
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J Biochem.151
巻: 151 ページ: 273-282
J Biochem.151. Feb 8
巻: 151(Epub ahead of print)(Not known yet)
Protein Expr.Puri.
巻: 82 ページ: 197-204
J Biochem.150
巻: 150 ページ: 439-450