研究概要 |
近年,トウモロコシ等,食物の持つ糖を利用した発酵法でのエタノール生産(バイオエタノール産生)が注目を集めている。しかし,食物を利用する限り,食糧問題とエネルギー生産のバランスをどう調整するかという問題が生じてくる。そこで食物と競合しない木質系バイオマス(廃材等)を利用し,糖を生産することができれば,バイオマス利用の促進に大きな弾みをつけることができる。そのためには,硬い結晶構造をもつセルロースを主成分とする木質系バイオマスを高速で分解することのできる,強力な酵素セルラーゼの開発が渇望されている。既に研究代表者らは,木質系バイオマスの酵素的分解に利用可能な有用超耐熱性セルラーゼを開発することを目標に,Pyrococcus horikoshi由来の超耐熱性セルラーゼの触媒ドメインと他の好熱性古細菌(Pyrococcus furiosus)由来の糖分解酵素キチナーゼが持つ基質吸着ドメインとの融合化を行い,不溶性基質に強い活性を持たせたセルラーゼの高機能化研究を行っている。昨年度ではこの融合セルラーゼをさらに高機能化させる指針を得るため、セルラーゼのC末に吸着ドメインを融合し、その際に用いるリンカー長の効果の検証を行った。その結果、最適なリンカー長は10から30アミノ酸程度である事を明らかにしアミノ酸配列によるリンカーの自由度も重要であることを明らかいした。本年度はN末に融合させた際のリンカーの長さによる影響の度合いを明らかにするため各変異体の発現系の構築と精製を行い各変異体の不溶性基質に対する分解活性をソモギーネルソン法を用い比較検討した。興味深い事にN末に吸着ドメインを融合した場合、リンカー長が長い方が活性増強効果が高く、効果を調べた最長のリンカー長(50アミノ酸)で最大の効果が得られた。ただし、増強効果は2倍程度でありC末に融合した場合よりも効果は少し劣る事が判った。
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