研究概要 |
当該年度では、細菌のEPA合成におけるチオエステラーゼ(TE)活性の関与について検討した。EPA合成遺伝子pfaA-E のみからなるベクターpEPAΔ1,3,4,9を導入した大腸菌はEPAを合成する。この結果は、EPA合成ではに1) ホストである大腸菌のTEがEPA合成に関与している 2) Pfa上に未同定のTE活性ドメインが存在する、ことを示唆する。しかし、TE欠損大腸菌をホストにし、pfaA-pfaEからなるEPA合成遺伝子群クローン化されているベクターを導入してもEPAが合成されることから、ホストのTEはEPA合成に関与していないと考えられる。また、EPA合成細菌由来のTE遺伝子ホモログをpEPAΔ1,3,4,9とともに大腸菌に導入したところ、EPAの含量は減少したが、形質転換細胞あたりの脂肪酸含有量は増加した。これは、TEホモログが大腸菌のEPA以外の脂肪酸合成系と反応したためであり、pfa遺伝子外部に存在するTEはEPA合成に関与しないと考えられる。EPA合成菌であるP. profundum SS9のPfaCタンパク質上にはデヒドラターゼドメインが存在する。このDHドメインをコードするDNA断片を、pEPAΔ1,3,4,9とともに大腸菌に導入したところ、EPA合成が停止した。これの結果は、DHドメインをPfaから独立させたため、合成途上のEPAが切り出され、EPA合成が進まなかったためと考えられる。即ち、Pfa上のDHドメインがEPA合成におけるTE活性を担っていると予想される。
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