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2012 年度 実績報告書

癌細胞表面に発現した分枝型O-グリカンによる宿主免疫逃避機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 22570131
研究機関弘前大学

研究代表者

坪井 滋  弘前大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (20526727)

研究分担者 大山 力  弘前大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80282135)
研究期間 (年度) 2010-04-01 – 2014-03-31
キーワード糖鎖生物学 / 癌転移 / 免疫 / 膀胱癌 / NK細胞 / 前立腺癌
研究概要

研究目的:癌細胞表面にコア2O-グリカンと呼ばれる糖鎖が発現すると、癌は宿主の免疫細胞から逃避し悪性化する。本研究は、コア2O-グリカンを高発現した癌細胞が、どのようにして免疫細胞から逃避しているのかを明らかにすることを目的とする。研究計画:コア2O-グリカンで修飾された癌細胞表面分子MUC1が、どのようなメカニズムでNK細胞による攻撃から逃避しているのかを明らかにする。
今年度に得られた研究結果:
(1) コア2O-グリカンで修飾された癌細胞表面のMUC1は、NK細胞のTRAILと癌細胞のDRとの相互作用を弱める働きをもっていた。このため、コア2O-グリカン高発現膀胱癌は、NK細胞による攻撃から逃避できることがわかった。
(2) コア2O-グリカン高発現前立腺癌も、同様のメカニズムでNK細胞による攻撃から逃避していることを示した。
研究成果:上記の結果より、コア2O-グリカンを利用した癌細胞の、NK免疫逃避のための第二のメカニズムを明らかにすることができた。また、このメカニズムは別の癌種にも存在している、極めて一般性の高いものであることがわかった。この成果を公表した。(論文2報、総説1報。いずれも査読有り)

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

当初の計画の、コア2O-グリカン高発現膀胱癌細胞がNKレセプターとリガンドとの相互作用を抑えるというNK免疫逃避第一のメカニズム解明に加え、コア2O-グリカンで修飾されたMUC1(細胞表面ムチンの一つ)が、NK細胞のTRAILによる攻撃に対してシールド効果を発揮するという、まったく予想外の第二のNK免疫逃避メカニズムも明らかにすることができた。さらに、このメカニズムの癌種を越えた一般性も示すことができた。成果を2報の論文、1報の総説として発表することができた。

今後の研究の推進方策

コア2O-グリカンで修飾された癌細胞は、NK細胞だけでなく、細胞傷害性T細胞(CTL)による攻撃からも逃避していることが知られている。コア2O-グリカンによる、CTL免疫からの逃避機構を明らかにする。この結果は、癌のワクチン療法の改良に結びつくと考えられる。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2013 2012 その他

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Core2 O-glycan-expressing prostate cancer cells...2013

    • 著者名/発表者名
      Okamoto, T. et al.
    • 雑誌名

      Molecular Medicine Reports

      巻: 7 ページ: 359-364

    • DOI

      10.3892/mmr.2012.1189

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Tumor defense systems using O-glycans2012

    • 著者名/発表者名
      Tsuboi, S.
    • 雑誌名

      Biological and Pharmaceutical Bulletin

      巻: 35(10) ページ: 1633-1636

    • DOI

      10.1248/bpb.b12-00367

    • 査読あり
  • [雑誌論文] MUC1 carrying core 2 O-gluycans functions …2012

    • 著者名/発表者名
      Suzuki, Y. et al.
    • 雑誌名

      International Journal of Oncology

      巻: 40 ページ: 1831-1838

    • DOI

      10.3892/ijo.2012.1411

    • 査読あり
  • [学会発表] O-グリカンによる癌の免疫逃避機構

    • 著者名/発表者名
      坪井 滋
    • 学会等名
      第6回東北糖鎖研究会
    • 発表場所
      弘前(弘前大学)
  • [学会発表] 糖鎖を利用した癌細胞自己防御システム

    • 著者名/発表者名
      坪井 滋
    • 学会等名
      東北薬科大学分子生体膜研究所 戦略的研究基盤形成支援事業シンポジウム
    • 発表場所
      仙台(東北薬科大学)
    • 招待講演

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公開日: 2014-07-24  

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