研究概要 |
申請者は神経内分泌細胞の“ペプチドホルモンが分泌顆粒へ選別されるメカニズム”を解析する過程で、ホルモンを選別し分泌顆粒へ輸送するセクレトグラニンIII(SgIII)が高コレステロールである分泌顆粒膜に結合すること、細胞内コレステロール合成を阻害すると顆粒の形態不全が起こること、など顆粒膜コレステロールの重要性に遭遇した。本申請では、分子レベル、細胞レベル、個体レベルでのSgIII 機能の解析を足掛かりに、神経内分泌組織である視床下部、下垂体、膵島での分泌顆粒形成におけるコレステロールの関与を明らかにし、コレステロー代謝とホルモン分泌のクロストークといった高次機能の解明を行うことを目標にしている。 申請者はこれまでの研究でSgIII発現抑制細胞を解析してトランスゴルジネットワークから分泌顆粒にホルモンを輸送する経路としてSgIIが関与する経路とは別の経路が存在することを見出した。平成24年度はSgIII発現抑制細胞の微細構造を電子顕微鏡レベルで明らかにし、他のマーカータンパク質について申請者の仮説を裏付ける生化学的証拠を得た。またSgIII発現抑制細胞におけるペプチドホルモンの大部分が構成的分泌経路で細胞外に分泌されることを明らかにした。申請者は上記結果をまとめTraffic 14, 205-218, 2013に報告した。SgIIIを欠損したノックアウトマウスの解析は、内分泌臓器でホルモンのプロセッシング(限定切断)が減弱していること、ノックアウトマウスがホルモン分泌に絡む病態を持つこと、高脂肪食による肥満を示すこと、を見出した。
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