研究概要 |
骨芽細胞は、骨髄における造血微小環境(HSCniche)の重要な構成要素であることが示されている。本研究では、骨芽細胞の増殖分化に必須である骨形成因子(BMP)シグナルの、骨髄内造血のホメオスタシスにおける生理機能を明らかとすることを目的とする。本研究期間内では以下の項目について検討を行っている。(1)骨髄特異的BMP2,4,7コンディショナルノックアウトマウスを作成し、それらの造血系の異常を解析することで、造血系のホメオスタシスにおける個々のBMP分子の生理機能を評価する。(2)BMPシグナルを介したHSCniche、間葉系幹細胞微小環境(MSCniche)の相互作用の分子メカズムの解析を行うことを最終目標として、BMP2,4,7分子とそれらの受容体(Alk2,Alk3,Alk6,ActRIIa,ActRIIb,BMPRII)の骨髄内における局在を明らかとする。 本研究期間内において、骨髄特異的BMP4またはBMP7のコンディショナルノックアウトマウス、及びBMP4とBMP7のダブルコンディショナルノックアウトマウスの作成を行い、骨髄細胞の表面マーカーの解析を行ってきた。その結果、BMP4コンディショナルノックアウトマウス、BMP7コンディショナルノックアウトマウスともに、血液細胞(赤血球、T細胞、B細胞、単球/マクロファージ)のポピュレーションに変化は見られなかった。ところが、BMP4コンディショナルノックアウトマウスにおいて造血幹細胞(LSK細胞)の数はコントロールマウスに比して有意に低下した。造血幹細胞のポピュレーションは、BMP7コンディショナルノックアウトマウスでは変化が見られず、BMP4とBMP7のダブルコンディショナルノックアウトマウスの表現型はBMP4コンディショナルノックアウトマウスのものと同等であったことから、骨髄内造血幹細胞の維持においてBMP4がユニークな生理機能を有していることを示唆した。
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