研究課題
ID1は乳癌などに係わる癌遺伝子であるが、その発現制御には不明点が多い。本研究では、肝癌細胞株HepG2におけるHGFによるID1の発現量減少が、ユビキチン転移酵素E3の構成因子Skp2によるユビキチン非依存的なMyc転写活性の制御による可能性、および転写抑制に係わるヒストンH3K9me3のHGFによる状態変化と係わる可能性を得た。これらを基に下記項目について結果を得た。1. HGF非存在下においてSkp2またはMycのノックダウンを行い、これらがID1発現を制御することを明らかにした。2. HGF刺激細胞ではp16プロモーターが活性化するが、Skp2過剰発現がこれを抑制し、この抑制をID1ノックダウンが回復させた。3. Skp2過剰発現がMyc活性を上昇させることから(H23年度実績)、1,2の結果より、Skp2はMyc活性の制御によりID1発現を正に制御することを明らかにした。4. ヒストンH3K9メチル化酵素 G9aを薬剤で特異的に阻害したところ、HGF刺激48時間以後のp16発現上昇の抑制および細胞増殖停止の解除が見られたことから、HGF刺激48時間以後の細胞変化にG9aが係わることが分かった。5. 増殖状態が異なるHepG2細胞間の遺伝子発現をマイクロアレイで比較した結果、増殖中と不可逆的増殖停止前の細胞間では発現遺伝子は近いが、それらと不可逆的増殖停止した細胞間では有為に異なっていた。今後の詳細な解析により癌細胞が不可逆的増殖停止に至る機構解明が期待できる。6. HGF刺激48時間以後に変化するヒストンH3K9me3の特異的抗体によるChIP-Seq解析を行ったところ、増殖中と不可逆的増殖停止した細胞間で小差はあるものの、統計学的有為な違いがあるゲノム部位は見つからなかった。この原因の1つとしてシーケンスのリード数不足が考えられたため解析の継続が必要となった。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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International Journal of Developmental Biology
巻: 未定 ページ: 未定
Nature Communications
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10.1038/ncomms2062
Journal of Biochemistry
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http://www.hyoka.koho.titech.ac.jp/eprd/recently/research/research.php?id=300