研究課題
近年、tRNA の転写、切断、細胞内局在などを標的にして、生育環境に応じて翻訳制御が行われる例がいくつも見つかってきた。tRNAを標的にした新しい翻訳制御の分子メカニズムを明らかにすることを目指し、今年度は、tRNAの動態、特にスプライシングと細胞内局在に着目して研究を進めた。tRNAのストレス依存の切断部位は、tRNAのアンチコドンステムによく見られるが、ほとんどの真核生物のtRNAのイントロンは、この部位に挿入されている。そこで、tRNAのイントロンの生理的意義を検討するため、tRNAのイントロン欠失株の構築・解析を行った。出芽酵母のtRNA中、10種のtRNAはイントロンを持つ遺伝子にコードされるが、多くのtRNAは最大10個の重複遺伝子から転写されている。本研究では、tRNAの種類毎に完全なイントロンイントロン欠失株を構築し、これら全ての株が生育可能であることから、tRNAのイントロンには生育に必須な機能のないことを明らかにした。一方、昨年度、in vivoにおいてもイントロン依存にwobble位がシュードウリジン(Ψ)化されることを明らかにしたtRNA-IleUAUでは、イントロン欠失によりにΨ化されないwobble位のUはncm5Uに誤修飾され、かつ、核に留められる傾向にあることを突き止めた。このイントロン欠失株でΨ化を司る酵素Pus1pを過剰発現すると、核へのtRNA-IleUAUの蓄積が亢進することから、アンチコドンステム部分の修飾状態を認識してtRNA機能をその細胞内局在のレベルで制御する機構の存在が示唆された。このPus1pによる異常tRNAの認識機構や細胞質におけるtRNAの切断機構の何れもがアンチコドンループを標的とするのは、eEF1Aと複合体を形成した状態のtRNAにおいて、ここが最もアクセスしやすい部分であることと不可分だと思われる。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Nucleic Acids Res
巻: 41 ページ: 3901-3914
DOI:10.1093/nar/gkt010
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Encyclopedia of Molecular Cell Biology and Molecular Medicine
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