活性酸素種を産生するNADPHオキシダーゼの発生過程での機能を解明するため、ショウジョウバエNADPHオキシダーゼの一つであるdDuoxをノックダウンし、表現型への影響を解析した。ショウジョウバエNADPHオキシダーゼdDuoxのRNAiをUAS配列下流に接続したプラスミドをショウジョウバエ卵にマイクロインジェクションし、トランスジェニック系統(UAS-dDuoxIR_<976-1145>)を樹立した。続いて、各種ショウジョウバエGa14ドライバー系統と交配し、組織特異的にdDuoxをノックダウンした系統を樹立し、その表現型を観察した。全身でdDuoxをノックダウンした場合は致死となり、翅原基で特異的にノックダウンした場合はオープンウィングとなり、さらに翅が脆弱となった。しかし、複眼原基、胚縦走筋などでノックダウンした場合は、異常な表現型は認められなかった。 続いて、翅形成におけるdDuoxの機能を解明することを試みた。まず、翅原基特異的ノックダウン系統を用いて、免疫染色および活性酸素種の検出によって、翅原基特異的にdDuoxがノックダウンできていることを確認した。さらに、ノックダウン系統において翅におけるカテコールおよびジチロシンの形成が減少していることを見出した。これらの結果より、翅形成において活性酸素種はタンパク質中のチロシン同士を架橋することによって、翅を安定化していることが示された。また、さらにカテコールはメラニンあるいはキノン化合物の合成の前駆体であることから、活性酸素種が翅のタンニングによる硬化に関与していることが示唆された。これらは、活性酸素種の新しい機能を示すものである。
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