研究概要 |
1.部位特異的変位体によるトウモロコシ b561膜貫通電子伝達の分子機構の解明: ① 動物神経系や植物液胞などに存在するシトクロムb561ファミリータンパク質に共通する細胞質側モチーフが保存されており、細胞質側の保存性塩基性アミノ酸残基(Lys83, Arg72等)と共にアスコルビン酸(AsA)結合部位を形成していると考えられる。既に、我々の行ったK83A,K83D,K83E変異体についてのStopped-flow法とPulse radiolysis法による解析により、AsAから酸化型ヘムへの電子受容の顕著な遅れが観測された。R72A,R72D,R72E変異体の場合には野生型で見られたpH依存性の極端な電子伝達の遅れが観測されなかった。このことはArg72残基がプロトン移動に関与していることを示している。これら分子機構の詳細をこれらの保存性部位および周辺残基の部位特異的変異に基づいて解析・議論した。 ② AsAから細胞質側ヘムに渡った電子当量は分子内α-helixの束を通って小胞内側ヘムに伝達される。2つのヘム間距離はまだ結晶構造が明らかになったわけではないが、モデルの推定によると、相当大きく、生理的に意味のある電子伝達が起こりうるぎりぎりの距離である。Pulse radiolysisの実験でのヘムの再還元過程は実際上、細胞質側ヘムから小胞内側ヘムへの分子内電子伝達過程を観測していると推定される。どのようなメカニズムにより電子伝達反応を行っているのかを解明するため、分子内部に位置する高度保存性残基, Trp, Phe, Glnの部位特異的変異体の作製とStopped-flow法とPulse radiolysis法によるによる電子伝達反応の解析を行った。 ③ これらの部位特異的変異体のヘム周辺の構造を明らかにするため、極低温ヘリウム温度でのEPRスペクトル解析を行った。
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