本年度計画に沿って以下の研究を実施した。1つ目の研究課題である「活性化した受容体のクラスリン小胞への移動機構の解明」については、リガンドー受容体の移動を制御する蛋白質の同定を試みた。受容体の移動にはリン酸化が必要であるため、酵母接合フェロモン受容体であるSte2のリン酸化型変異体を作製し、22種類のエンドサイトーシス関連蛋白質との結合解析を行った。この結果、Apl1p、Apm4p、Aps2p、End3p、Ent1p、Sla1p、Syp1p、Yap1801p、Yap1802pの9種類のエンドサイトーシス関連蛋白質がコントロールと比較して強く結合していることが分かった。次に、これら9種類の蛋白質について、リン酸化依存的な結合を調べるため脱リン酸化型Ste2p(Ste2-6SA)との結合を調べた。この結果、Apl1p、Apm4p、End3p、Ent1p、Sla1p、Syp1pの6種類の蛋白質が、脱リン酸化型Ste2pよりリン酸化型Ste2pに強く結合することが分かった。これらの遺伝子のSte2pのエンドサイトーシスにおける役割については現在、解析中である。また、酵母ゲノムライブラリーを用いて40万種の形質転換体をツーハイブリッドシステムによりスクリーニングし、Ste2pの蛋白質として機能未知蛋白質であるYlr419wを同定した。2つ目の研究課題である、「クラスリン小胞の初期エンドソームへの輸送機構の解明」については、クラスリン小胞とエンドソームの会合メカニズムを明らかにするために、クラスリン小胞とエンドソームの会合を仲介しているアクチンフィラメントの動態に異常がある変異体の同定を試みた。エンドサイトーシス関連蛋白質の遺伝子欠損変異体を約100種類作製し、これらの変異体におけるアクチンフィラメントの動態を解析した。これまでに、アクチンフィラメントの動態に異常がある遺伝子欠損変異体を数種類同定しており、現在、これらの変異体におけるクラスリン小胞とアクチンフィラメントの相互作用について詳細に解析している。
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