本年度計画に沿って以下の研究を実施した。「クラスリン小胞の初期エンドソームへの輸送機構の解明」については、クラスリン小胞とエンドソームの会合メカニズムを明らかにするために、蛍光標識したエンドサイトーシスマーカーを用いて、クラスリン小胞―エンドソーム間の輸送に異常がみられる変異体をスクリーニングした。本年度は、出芽酵母の全遺伝子(約6500種類)の約8割の変異体についてスクリーニングが完了し、約200種類の輸送に異常が見られる変異体を同定した。得られた変異体について、さらに詳細な解析を行った結果、輸送異常の表現型として、「細胞膜から細胞内の輸送」、「エンドソーム間の輸送」、「エンドソームからリソソームへの輸送」の三つに大きく分類することができた。この中で、「細胞膜からの取り込みに異常があるもの」について、さらにクラスリン被覆小胞の形成段階に与える影響、またエンドソームマーカーの細胞内への取り込み量の解析を行った。この結果、約10種類の変異体ではクラスリン被覆の形成過程に異常があること、また約20種類についてはエンドソームマーカーの細胞への結合効率が低下していることが分かった。また、本スクリーニングにより、約10種類の機能未知の遺伝子の同定に成功しており、今後はこれらの機能解析を進めて行く予定である。「クラスリン小胞―エンドソーム間輸送におけるアクチン骨格の役割」については、エンドサイトーシス過程のアクチン骨格制御因子であるPan1pの変異体を用いてアクチン依存的な動態を示すエンドソームの同定を試みた。この結果、ESCRT-0およびESCRT-1複合体の構成分子が特異的にこのアクチン凝集体に局在することを明らかにした。さらに、ESCRT-0の構成分子をマーカーとして用いることにより、初期ESCRT複合体の局在するエンドソームがアクチン骨格依存的に運動していることを明らかにした。
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