研究概要 |
シャペロニンGroELの反応サイクルは、2つのリングが交互に機能しながらはたらくことが通説として定着してきた。しかし、これまでの作用機構モデルでは存在しえないフットボール型反応中間体(2つのリングに同時にGroESが結合した複合体)の重要性を確認したため、シャペロニンの新しい作用モデルの確立が必要となった。本研究では、in vivoにおけるGroELの作用機構を検証するため、大腸菌の細胞内で形成されたGroELのフットボール型複合体を2つの異なる方法で検出する事を目的としている。細胞内光クロスリンク技術を用いて、細胞内で形成されたGroEL、GroEL-GroES(弾丸型)、GroES-GroEL-GroES(フットボール型)の3種の複合体を分離・検出することに成功した。培養時の温度を37~42℃で変化させ、各複合体の量を比較したところ、いずれの条件でも3種の複合体が検出され、熱ストレスによる顕著な量的差異は見られなかった。また、GroES-GFPを用いた蛍光相関分光法(FCS)により、GroEL/GroES複合体と近い分子量を持つ複合体が観察できており、大腸菌内GroEL/GroESの結合・解離の動的観察が可能となった。これを蛍光相互相関分光法(FCCS)に展開するために、7量体GroESを1つの遺伝子で発現させたtandem-GroESを用いて(Nojima et al., J. Biol. Chem., 2008)、GroES7-GFP、GroES7-mOrangeを発現させることに成功した。2種のGroESを同時に発現させた大腸菌のFCCSを行うことで、細胞内でGroEL/GroES フットボール型複合体が形成されていることを検証している。
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