本年度はオートファジー欠損株における遊離糖鎖の詳細な構造解析を行うとともに、その生成についての分子機構の解析を行った。詳細な糖鎖構造については、中性糖およびシアル酸含有糖鎖とともに、当研究室で開発された逆相HPLCを用いた新規解析手法を用いて主要なものは糖の結合様式を含めてすべて詳細に決定することが出来た。また糖鎖の生成機構に関しては、(1)糖鎖構造がリソソーム病で見られる糖鎖構造と酷似していること(2)細胞質の脱糖鎖酵素の阻害によって糖鎖の減少が見られないことを考え合わせて、リソソーム由来であると考えられた。このことから、オートファジー欠損細胞に見られるシアロ遊離糖鎖はリソソームで作られ、オートファジーが欠損した時に細胞質に放出されることが判明した。実際、リソソーム膜上に存在するシアル酸の輸送体のsiRNAによるノックダウンによって、シアロ糖鎖の蓄積が顕著に減少するこが分かった。これらのことから、オートファジーはリソソームによって代謝されるべきシアロ糖鎖が細胞質に漏出しないマシナリーの維持に必須であり、オートファジーの欠損によってシアル酸輸送体の基質認識が甘くなり、本来細胞質に放出されないべきオリゴ糖鎖が細胞質に放出されていることが分かった。一方この細胞質シアロ糖鎖は細胞質シアリダーゼの発現によってその量が減少することから、哺乳動物細胞はシアロ糖鎖が細胞質に出現してもそれを非リソソーム的に代謝する機構を有することが示唆された。
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