研究概要 |
本年度はオートファジー欠損を誘導出来るm5-7株を用いて、オートファジーの欠損とシアル酸含有糖鎖の量的増減を解析し,(1)シアル酸含有糖鎖はリソソーム由来である;(2)基底状態のオートファジーはシアリンの正常な機能に必須であり、オートファジー欠損下ではシアリンは誤ってシアル酸含有糖鎖を細胞質に放出する;(3)一端細胞質に放出されたシアリル糖鎖は(細胞質シアリダーゼを発現している組織を除き)通常状態では代謝されない;という事実を明らかにした。本研究結果は現在論文を投稿し、論文修正中である。一方、本研究の過程で見出された血清中のシアル酸を持つ複合型遊離糖鎖に関して様々な哺乳動物(ヒト、ウサギ、ウシ、マウス、ラット、ハムスター)および鳥類(ニワトリ)の血清を用いて解析を行い、(1)細胞質中の遊離糖鎖と異なり還元末端にキトビオース構造をもつGn2型の遊離糖鎖が蓄積していること;(2)それらの構造について、種によって特徴が異なることなどを明らかにした。本研究結果も投稿論文を作成準備中である。また、ラットから調製した肝細胞を用いた解析により、これらの遊離糖鎖は肝臓から分泌されることを明らかにしている。 以上、3年間の研究結果により、これまで殆ど不明だったシアル酸を持つ複合型遊離糖鎖について細胞質での生成、分解の分子メカニズムの一端を明らかにするとともに、あらたに分泌される複合型遊離糖鎖の存在を発見することが出来た。特に血清の遊離糖鎖に関してはこれまで報告がなく、その生成のメカニズムについて今後の研究の発展が期待される。
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