弾性タンパク質コネクチン(タイチン)は、脊椎動物・無脊椎動物両者の横紋筋にのみ存在し、筋肉の構造を維持する役割をしている。コネクチンの弾性を担っている領域は、PEVKの4つのアミノ酸が全体の70%を占める領域のみであるといわれている。しかし申請者は、無脊椎動物であれば新しい弾性モチーフを持つタンパク質が存在するのではないかと考え、系統分類上で下位に属する棘皮動物のウニと環形動物ゴカイを材料に、コネクチン様タンパク質の探索をおこなった。 (A)ウニ咀嚼筋のコネクチン様タンパク質 棘皮動物であるウニの咀嚼筋(平滑筋)のSDS全抽出物を電気泳動し、Western blotをおこなった結果、分子量約150万のバンドが脊椎動物コネクチン抗体と反応を示した。そこで、ウニのゲノムデータベースからコネクチンに特徴的なイムノグロブリン(Ig)とフィプロネクチン3(Fn3)などのドメインを探索し、Igドメイン78個、Fn3ドメイン78個、C末端寄りにキナーゼドメイン1個を含む約400kbpの配列を見出し、この配列がウニのコネクチン様タンパク質をコードしていると推定した。この中には、これ迄に明らかになっていないPEVK様の新しいリピート配列3種類が存在した。 (B)ゴカイ斜紋筋のコネクチン様4000Kタンパク質 ゴカイ体壁筋(斜紋筋)のcDNA libraryを用いて、これまで得られていた4000Kの配列をもとに3'及び5'walkingを行ない、全体で50kbp(1830kDa)の配列を決定した。得られた配列のドメイン構造を解析した結果、PEVKとIgドメインの繰り返し構造やスペクトリンリピートを持つなど、これまでのコネクチン様タンパク質では見つかっていないゴカイ斜紋筋4000K特有の構造が存在することが分かった。
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