研究課題
脊椎動物及び無脊椎動物両者の横紋筋に存在する高分子量タンパク質コネクチン(タイチン)は、その弾性で筋肉の構造を維持する働きをしている。コネクチンの弾性を担っている領域は、PEVKの4つのアミノ酸が全体の70%を占めるPEVK領域のみであると現在は言われている。しかし申請者は、無脊椎動物であれば新しい弾性モチーフを持つタンパク質が存在するのではないかと考え、系統分類上で下位に位置する動物を材料に、コネクチン様タンパク質の探索を行なった。棘皮動物ウニのゲノム情報からコネクチン様タンパク質の配列を推定後、ウニ咀嚼筋(平滑筋)のcDNAを用いてPCRにより配列を決定した。その結果、約80 kbp(推定分子量約298万)が明らかになった。ドメイン構造の予測から、フィブロネクチンのタンデムリピートを持つと共に、長いPEVK領域が存在するなど、横紋筋とは異なる構造であった。この長いPEVK領域には、37アミノ酸と70アミノ酸から成る2種類の繰り返し領域が存在した。次に、軟体動物カサガイのゲノムデータベースを用いてコネクチン様タンパク質遺伝子を探索し、仮配列を推定した。これを基にカサガイ平滑筋から調製したcDNAを使用してPCRを行ない、54 kbp(推定分子量約202万)の配列を決定した。配列の一部の組み換えタンパク質に対する抗体はカサガイ平滑筋と反応を示したことから、得られた配列はカサガイ平滑筋のものであることが確認された。また決定した配列には弾性に関わるアミノ酸リピートが2種類存在した。1つ目はEVTリッチな45アミノ酸の繰り返し、2つ目はEリッチで1つ目とは異なる45 アミノ酸の繰り返し領域であった。以上のように、無脊椎動物の平滑筋には、横紋筋とは異なったコネクチン様タンパク質が動物種によりそれぞれに発現して、その構造を維持している事が示唆された。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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