研究課題
鞭毛・繊毛運動の基礎はモーター蛋白質ダイニンによる微小管の滑り運動である。鞭毛には異なる機能をもつ多種類のダイニンが存在する。その中で、根元にあって存在量が微量のマイナーダイニンは鞭毛の初期屈曲形成に関与する重要な働きをしている可能性が示唆されている。本研究では、このマイナーダイニンを単離精製する方法を確立し、その構造と機能を他のメジャータイプのダイニンと比較する実験を試みている。本年度は特異的抗体を用いたマイナーダイニンの精製法を検討した。まず、免疫沈降実験により抗体とダイニンの結合性を調べ、3種類あるマイナーダイニンのうち1種類についてその特異的抗体とダイニンの結合を確認した。次に、その抗体を用いてこのダイニンをガラスに機能的に固定する方法を検討し、微小管のin vitro motility assayの要領によりダイニンモーター活性を調べた。ATP非存在下にダイニンと微小管のrigor結合が確認できたが、そこにATPを添加するとほとんどの微小管がガラス面から解離した。滑り運動する微小管がごく少数だが観察されたことから、今回の実験では機能的にガラスに固定されたダイニンの数が非常に少ないことが考えられた。軸糸内のマイナーダイニンの存在量は他のメジャータイプのダイニンの10分の1程度と少ないので、今後、実験に用いる軸糸量を増やして十分なダイニン量を確保すれば、このダイニンの特性を調べる実験は飛躍的に進むと期待される。
3: やや遅れている
この実験では3種類あるマイナーダイニンに対する特異的な抗体を用いるが、これまでに得られていた抗体は特異性が低く、そのうち1種類でしかダイニンの精製が成功していない。新たな抗体の作成が必要である。
今後、ダイニンの精製に用いるに十分な結合力をもち、かつ、特異性の高い抗体を新たに作成して、マイナーダイニンの精製を行う。また、実験に十分な量のダイニンを精製するために、より多くの鞭毛軸糸を用いてダイニンの精製を行うことも検討している。
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