研究課題
本研究は、光で活性化されてcAMPを産生するユニークな光センサータンパク質、光活性化アデニル酸シクラーゼ(PAC)の活性化メカニズムを明らかにするとともに、その細胞工学的応用を発展させるべく企画したものである。今年度は、PACの祖先型と考えられる、硫黄細菌Beggiatoaが持つ類似タンパク質(BsPAC)に変異導入を行い、大腸菌における機能発現を試みるとともに、それらの紫外/可視分光分析を行った。(1)大腸菌における変異導入BsPACの機能発現昨年度の研究において、BsPAC遺伝子を大腸菌のアデニル酸シクラーゼ欠損変異株に導入することにより、ラクトース代謝の機能相補を光依存的に行うことに成功した。本年度は、BsPAC遺伝子に変異を導入し、光依存的機能相補に及ぼす効果を調べた。結果として、多数の光活性化に異常を持つBsPAC変異体を得ることに成功し、さらに部位特異的変異導入を組み合わせて表現型の確認を行い、複数の重要なアミノ酸残基を特定した。(2)BsPACの紫外/可視分光分析と酵素活性の測定BLUFタンパク質の光応答は、青色光照射による吸収スペクトルの僅かな長波長シフトで特徴づけられる。そこで、前項で得られたBsPAC変異体を試料として、青色光照射時の吸収スペクトル変化を調べるとともに、エンザイムイムノアッセイにより酵素活性の測定を試みた。結果として49番目のグルタミン、113番目のロイシンが分子内光シグナル伝達に重要な役割を果たしていることが示された。
3: やや遅れている
本年度初頭に東邦大学へ異動となったため、新しい研究環境の整備に手間取ったことによる。しかしながら、後半は比較的順調に進んだ。
今後はさらに精力的にBsPAC変異体の機能解析を進め、できるだけ早くデータを取りまとめて論文化する。また、構造生物学研究者との連携を深め、光活性化に関する機能構造連関の解明を目指す。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (4件)
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