本研究は、光で活性化されてcAMPを産生するユニークな光センサータンパク質、光活性化アデニル酸シクラーゼ(PAC)の活性化メカニズムを明らかにするとともに、その細胞工学的応用を発展させるべく企画したものである。今年度は、PACの祖先型と考えられる、硫黄細菌Beggiatoaが持つ類似タンパク質(BsPAC)に変異導入を行い、アデニル酸シクラーゼ欠損大腸菌の機能相補による解析を行うとともに、大量発現系の構築を試みた。 1. 大腸菌における変異導入BsPACの機能発現 昨年度の研究において、BsPAC遺伝子に変異を導入し、光依存的機能相補に及ぼす効果をアデニル酸シクラーゼ欠損大腸菌の機能相補により幾つかの機能上重要なアミノ酸残基を特定した。本年度はさらに多くの変異体を作成し、解析を行ったところ、フラビンを結合するBLUFドメインとアデニル酸シクラーゼ触媒ドメインをつなぐループ部分に相当する複数のアミノ酸残基が機能発現に欠かせないことが分かった。 2. 大腸菌におけるBsPACの大量発現 昨年度までに、分子シャペロンとの共発現を行うことにより比較的良好な可溶性試料が得られることが判明していたので、本年度は発現条件の検討をさらに進めるとともに、新しい発現用宿主大腸菌の検討を行った。その結果、現状では好冷温細菌由来のシャペロニンを用いた系が最善であると判断された。
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