1. 核内受容体peroxisome proliferator activated receptor γ (PPARγ)のアポ体の分子動力学シミュレーション:高精度で並列効率が高い静電相互作用の取り扱いが可能なzero-dipole summation法を実装した。このプログラムを用いてアポ体の水溶液中における常温の分子動力学シミュレーションを実施し、各アミノ酸残基の熱揺らぎを解析した。2.リガンドC8-BODIPYのパラメータ作成:C8-BODIPYはホウ素を含む化合物で、既知のホウ素のパラメータが存在しないため、量子化学計算と基準振動解析によってホウ素を含む結合長や結合角、二面角のパラメータを作成した。3.PPARγとC8-BODIPYのマルチカノニカル分子動力学法によるドッキングシミュレーション:1で得たアポ体の水溶液中の構造をPPARγの初期構造としてPPARγとC8-BODIPYのドッキングシミュレーションを実施した。なお、PPARγの主鎖やβ炭素は高温状態での崩壊をさけるために拘束するが、リガンドがポケットに入り込むための構造変化を許容するために、1で得た知見を基にポケットに柔軟性を持たせた。常温における構造アンサンブルを解析したところ、リガンドの天然構造とのroot-mean-square deviationが3 Å以下の構造が得られ、PPARγのようなリガンド結合部位が蛋白の内部に存在する予測の難易度が高い系において、本法は天然構造を予測できることが示された。
|