研究課題/領域番号 |
22570163
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
若林 健之 帝京大学, 医療技術学部, 教授 (90011717)
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キーワード | アクチン / ミオシン / 細胞分化 / 収縮タンパク質 / 機能的変異株 / 細胞性粘菌 / X線結晶解析 / ATPase |
研究概要 |
アクチンは筋肉以外の真核細胞では最も大量に含まれ、筋肉でもATPase活性をもつミオシンに次いで多い。筋肉以外では、アクチンは動的に重合・脱重合し、約50%はモノマー状態にある。アクチン重合は、神経細胞の樹状突起の形成、がん細胞の浸潤や白血球の細胞移動、発生・分化のための細胞運動に必須である。海馬細胞では、入力信号の数秒後にシナプス直下でアクチン重合が起こり、記憶形成との関連が注目されている。ディクチオ型粘菌に変異型アクチンを発現させたところ、ホスト細胞は野生型アクチンを発現し続けているにも関わらず、細胞飢餓の際に一日以内に細胞分化の異常が出ることを見いだした。遺伝学的にはDominant Negativeと呼ばれるこの現象を利用し、アクチンの機能的変異株をハイスループットに検出できる。アクチンのチロシン143を変異させた株は飢餓誘導性細胞分化に影響がでた。フェニルアラニンに変異させた場合は子実体の柄が太く短くなり、トリプトファンにすると柄が細く長くなる。前者の株から精製した変異アクチンは重合能が顕著に落ち、ミオシンのATPase活性化も異常があった。さらにアクチンの別の箇所に変異を導入したところ、サイクリックAMPによる走化性が低下したもの、収縮胞の形成が減弱したもの、細胞運動の異常があるものなどが見いだされている。今後これらの変異株から変異アクチンを精製し、生化学的に調べ、細胞学的変化との関係を吟味する。チロシン143の変異アクチンに関しては結晶解析を行い、生化学的性質の変化の構造的基盤を明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画した事柄はほぼ達成できている。当研究室は宇都宮市にある帝京大学の4階にあり、地震のために薬品棚、ガラス器具の棚などが倒れ、瓦礫の始末に約2ヶ月かかったが、それらの遅れは取り戻せている。停電のため失われたタンパク質試料もあるが、幸い液体窒素容器に保存した試料があり、これらを用いて研究を進めてきた。また地震によって失われた変異株は幸い保存してあったプラスミッドを再度導入して再確立させた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、変異タンパク質の精製と生化学的性質の決定と結晶化を推進する。既に結晶化に成功した試料もあり、これらはX線結晶解析を行う。
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