研究概要 |
X線結晶解析により高分解能で解かれたリボソームおよびmRNA、tRNA、伸長因子などの因子分子の立体構造を、反応開始から終了までの状態のリボソームの電子顕微鏡像に当てはめ、それぞれの状態に対応するリボソーム-因子分子複合体の詳細な立体構造を構築し、反応サイクルにおける構造変化メカニズムを原子レベルで明らかにすることを目指す。 本年度は、リボソームおよびタンパク質合成反応に関わる因子分子(mRNA,tRNA、伸長因子)の、柔らかさを考慮した電子顕微鏡像への当てはめによる精密な立体構造構築をした。用いたデータは、リボソームに伸長因子EFGタンパク質が結合したX線結晶構造(post-translocational状態)と電子顕微鏡像(pre-translocational状態とtranslocatioal状態)の3つである。原子レベルで尤もらしい立体構造を構築するために、電子顕微鏡像かつ立体化学に基づいた水中における分子動力学シミュレーションを実行した。あてはめは、post-translocational状態⇒tranlocational状態⇒pre-translocational状態の順番に実行した。 その結果、伸長因子EFGタンパク質がtRNAの転位運動を引き起こす際におこると考えられているリボソームの大きなサブユニットと小さなサブユニットのラチェット様運動を観測することができた。今後は、tRNA転位運動のダイナミクスを分子レベルで解析する。
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