研究課題/領域番号 |
22570175
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
樋野 展正 独立行政法人理化学研究所, 拡張遺伝暗号システム研究チーム, 研究員 (90469916)
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キーワード | クロスリンク / 膜タンパク質 / GPCR / RAMP / 非天然型アミノ酸 / 拡張遺伝暗号 / 質量分析 / タンパク質間相互作用 |
研究概要 |
1.RAMP-GPCR間のin vivo光クロスリンク 当グループ内においてRAMP2細胞外ドメインとGPCRの一種であるカルシトニン受容体様受容体(CRLR)の細胞外ドメインとの複合体結晶構造が得られた。この複合体が実際に細胞膜上で形成されているかどうかを調べるため、RAMP2の様々な位置にパラベンゾイルフェニルアラニン(pBpa)を導入した変異体を全長のCRLRとともにヒト胎児腎臓細胞膜上に共発現させ、細胞にUV照射した際のクロスリンクの有無を調べた。その結果、結晶構造中で見られた両者の相互作用領域の近傍にpBpaを導入した時にのみクロスリンクが見られたことから、この複合体が生体膜上でも同じ様式で形成されていることがわかった。この結果は、たとえば結晶構造を基に設計された阻害剤が細胞膜上に発現している複合体にも結合しうることを示唆するものである。 2.鎖長の長いクロスリンカーの開発とタンパク質への導入 pBpaを導入したRAMP2変異体はCRLRとはクロスリンクしたが、類縁のGPCRであるカルシトニン受容体(CTR)とはクロスリンクしなかった。これはpBpaの鎖長が短く、非常に限定的な範囲でしかクロスリンクを形成しないことが原因であると考えられた。そこで、鎖長が長くフレキシブルな構造を持ち、かつタンパク質中に部位特異的に導入可能な新規クロスリンカー(Nε-トリフルオロメチル-ジアジリニル-ベンジルオキシカルボニル-リジン:tmdZLys)を開発した。このクロスリンカーは、古細菌に由来するピロリジルtRNA合成酵素の変異体とピロリジンtRNAを哺乳類培養細胞中に発現させることで、目的のタンパク質に対して部位特異的に取り込ませることができた。さらに、実際にtmdZLysはpBpaと比較して広い範囲で対象タンパク質とクロスリンクすることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
光クロスリンク能をもつ長鎖非天然型アミノ酸であるtmdZLysの導入に成功したことで、RAMPと相互作用するGPCRを探索するための準備が整った。
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今後の研究の推進方策 |
新たに開発した鎖長の長い非天然型アミノ酸tmdZLysを用いてRAMPと相互作用するGPCRの探索を行う。同時に、ふたつのタンパク質がクロスリンクした箇所の配列を質量分析によって決定する手法の開発に取り組む。
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