研究概要 |
トリES細胞の培養に最適な手法を確立するために、我々は複数の哺乳動物ES細胞の培養法(2iおよび3i培養)をトリES細胞に応用してきた。これまでに得た結果から、鳥類の胚盤葉細胞はマウスのES細胞とは異なる性質を持つ可能性がある。鳥類の胚盤葉細胞はマウスとは違い、無血清培養やフィーダー細胞フリー培養や2iおよび3i培養では維持できない。また、通常のマウスES細胞培養法(血清,BMP4,LIF存在下)でも培養できない。一方、Fgf2とアクチビンAを混合して鳥類の胚盤葉細胞を培養したところ、アルカリフォスファターゼに反応するコロニー形成が確認できた(未発表データ)。現在、特定の培養条件で培養した細胞を同定するために培養を続けている。 我々は更に、NanogやSox2などの多能性マーカを用いて、ニワトリの胚盤葉と培養胚盤葉細胞に免疫染色を施した。そして、今後の解析に有効な抗体をいくつか発見した。しかし、鳥類に特異的な抗体が不足しているため、これらの細胞を特定のRNAプローブを用いたIn SituハイブリダイゼーションとRT-PCR解析によって更に特定するつもりである。 また、実験用の卵を絶えず供給してくれる健康なキンカチョウのコロニー作りに成功した。そして、キンカチョウ胚の初期胚盤葉段階の特徴を明らかにするため、免疫組織化学的染色を行った。キンカチョウにおける様々な推定ES細胞マーカ発現プロファイルをニワトリと比較したところ、キンカチョウとニワトリでは発現プロファイルに重要な違いがあることが判明した。この知見によって、キンカチョウES細胞培養法を確立し、トリES細胞を維持する生物学的メカニズムを理解できると考えている。 今後もキンカチョウ特有のプローブを用いて、In SituハイブリダイゼーションおよびRT-PCR解析を進めていく。
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