研究概要 |
本研究は、ウイルスを用いない鳥類トランスジェニック作製技術を確立することを目的としている。 トリES細胞の培養に最適な手法を確立するために、我々は複数の哺乳動物ES細胞の培養法(2iおよび3i培養)をトリES細胞に応用してきた。 本年度の研究結果より、後期のニワトリ胞胚に比べて、キンカチョウの初期胞胚は形態学的にマウス胚のE4.5前の着床前期に近いと考えられる。この初期胞胚は、多能性関連遺伝子Nanog, Pou5f1, Sox2 などを発現していたが、マウスのepi-stem cell (mEpiSc)マーカーであるFgf5 の発現は見られなかった。また、キンカチョウの初期胚盤葉細胞は、1i / 2i (単独あるいは2つの阻害剤)存在下において無血清培地とフィーダーセルフリー条件での培養が可能で、NanogとPou5f1の二重染色陽性およびアルカリホスファターゼ陽性の細胞塊を形成した。一方、同条件で培養されたニワトリEGK10胚盤葉由来の細胞塊は、アルカリホスファターゼもESCマーカーも共に陰性を示した。キンカチョウとニワトリでこのように結果が異なるのは、産卵時の成長度合いが違うためだと考えられる。 我々は当初の予定通り、キンカチョウES細胞培養法を確立した。鳥類に哺乳動物ES細胞の培養法(2iおよび3i培養)が適用できることを、キンカチョウを用いて証明したのである。これは 哺乳類以外の動物を用いて胚性幹細胞の研究を行う重要な手がかりとなる。
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