真核生物の染色体末端のテロメアDNAはG塩基に富む反復配列からなり、3’末端は突出した1本鎖DNA構造である。テロメア長は細胞の老化・癌化と密接に関連し、テロメア長の調節にはテロメア結合蛋白質とテロメラーゼが関与するが、詳細な分子機構は不明な点が多い。マウステロメア1本鎖DNA領域に結合するPot1蛋白質(mPot1)は、テロメア末端保護とテロメア長の調節に関与する。また、テロメラーゼとDNAポリメラーゼαは各々テロメアDNAのリーディング鎖とラギング鎖の伸長に関与する。出芽酵母では、テロメア1本鎖DNA領域に結合するCdc13蛋白質がDNAポリメラーゼαと相互作用することが知られており、マウスでも同様の相互作用が存在するかを検証するために、mPot1とDNAポリメラーゼα間の相互作用の可能性を解析した。 まず、大腸菌内でGST-mPot1(314-640) とHis-mPolα(1-330)を組換え蛋白質として発現させ、精製した。精製蛋白質を用いたGST-pull downによってmPot1(314-640) とmPolα(1-330)が直接的に相互作用することを示した。加えて、円偏光二色スペクトルにより精製したmPolα(1-330)が天然変性蛋白質であることを示した。 次に、これらの蛋白質のin vivoにおける相互作用を調べるために、NIH3T3細胞でテロメア上のmPot1 とDNAポリメラーゼαの共局在を検討した。mPot1に対する抗体を精製し、固定前にTriton X-100を含む溶液で抽出し、細胞核内でmPot1を観察する最適な条件を求めた。また内在性のmPot1 とDNAポリメラーゼαの相互作用をProximity ligation assay により観察した。
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