研究概要 |
細胞は複製したDNAを正確に娘細胞に分配しなけれはならず、その分配異常は細胞死、細胞の癌化などを引き起こす。そのため、細胞分裂の制御は多くの複雑なネットワークにより精密におこなわれている。細胞分裂制御因子は、抗癌剤の分子標的治療のターゲットとしても有用であり、新たな細胞分裂制御因子の同定は、癌治療の発展にもつながる。我々は新たな細胞分裂を制御するタンパク質を同定するため、siRNAのスクリーニングをおこない、Supervillin (SVIL)という遺伝子が細胞分裂の進行に必須であることを見出した。このタンパク質に対する抗体を作製し、その局在を観察したところ、細胞分裂時において、Central Spindle, Midbodyなどの特異的な部位に局在することが明らかとなった。SVIL発現抑制細胞では、細胞分裂が最終段階まで継続せず、途中で再び二つの娘細胞が融合してしまうことが観察された。SVILの局在に必須なタンパク質を探索したところ、SVILはモータータンパク質であるKIF14と結合し、この結合がSVILのCentral Spindleへの局在に必須であった。KIF14と結合できないSVILはMidbodyに局在することができなかった。さらに、Central Spindleに局在したSVILは、そこに局在する様々なタンパク質と複合体を形成し、アクチンとミオシンからなる収縮環の制御に関与していた。また、SVILは分裂期特異的にN末端がりん酸化されていることが判明した。このりん酸化部位に変異を導入することにより、SVILのアクチンへの結合に変化が観察された。現在Central SpindleにおけるSVILとKIF14の複合体がどのような役割を担っているのか検討中である。
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