研究課題/領域番号 |
22570182
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
千賀 威 名古屋大学, 医学系研究科, 准教授 (80419431)
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キーワード | 細胞質分裂 / セントラルスピンドル / 中央体 / SVIL / PLK1 / 収縮環 / リン酸化 |
研究概要 |
Supervillin(SVIL)は細胞骨格を制御するタンパク質として報告されている。我々はこのタンパク質が細胞分裂に関与することを見出し、研究を進めてきた。SVILは分裂期にはセントラルスピンドルという分離したクロモソームの中間点に局在し、そして中央体と呼ばれる領域に分裂の最終段階で局在する。この局在は抗体を用いた免疫染色、またGFP融合SVILを発現させた系で確認できた。SVILの発現を抑制した細胞をタイムラプス顕微鏡を用いて観察すると、分裂溝は形成され収縮は始まるが、収縮が完了せず途中で崩壊し、分裂中の細胞が再び融合してしまうことが見られた。このことより、SVILは収縮環の安定性に寄与していると考えられる。我々はさらにSVILがPLK1というプロテインキナーゼによりリン酸化されることを見出した。リン酸化部位を調べたところ、N末部分がリン酸化されることが確認できた。このリン酸化はSVILのセントラルスピンドルへの局在に重要であった。PLK1の活性を阻害するか、またはSVILのPLK1によるリン酸化部位に点変異を導入すると、SVILのセントラルスピンドルへの局在は顕著に減少した。PLK1にリン酸化されない変異型SVILを発現させた細胞ではスピンドル形成や染色体の分離に異常は見られなかった。しかしタイムラプス顕微鏡を用いて詳細に観察した結果、変異型SVILを発現した細胞では収縮環の幅が顕著に増加し、収縮が最後まで進行しないことが観察された。この結果、PLK1によるSVILのリン酸化はSVILの局在と収縮環の安定性に重要であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の目的では、SVILをリン酸化するタンパク質とリン酸化部位の同定を助成3年度におこなう予定であったが、すでに終了している。また、目的に掲げていたSVIL結合タンパク質の探索もほぼ終了している。
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今後の研究の推進方策 |
当初に掲げた目標を速やかに達成する。SVIL結合タンパク質を同定し、それがSVILの局在に必須であることを明らかにする。そしてPLK1によるリン酸化がSVILの局在をどのように制御し、SVILが収縮環の安定性に寄与する分子メカニズムを明らかにする。
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