小胞体では、多くの分泌タンパク質や膜タンパク質の生合成が行われている。多細胞生物では、細胞接着や細胞間コミュニケーションのために多くの膜タンパク質や分泌タンパク質が必要となる。ところが生合成の過程で、タンパク質はしばしば高次構造形成に失敗することが明らかになってきた。小胞体関連分解機構(ERAD)は、小胞体内でミスフォールドしたタンパク質をサイトゾルに引き出し、ユビキチン・プロテアソーム系で分解するシステムである。哺乳類小胞体膜に存在するユビキチンリガーゼHRD1はSEL1Lと複合体を形成し、さらに種々のERAD関連分子とともに大きな品質管理複合体を形成している。本研究において、HRD1-SEL1L複合体の安定性およびその制御機構およびHRD1-SEL1Lを含む品質管理複合体の形成状態と基質分解機能との相関関係を調べた。その結果、1.SEL1Lは半減期の短い不安定なタンパク質であるが、HRD1と複合体を形成することによって細胞内で安定に存在する、2.HRD1-SEL1L複合体の細胞内存在状態は複数存在し、ダイナミックに複合体形成状態を変化させることで分解機能を制御している可能性がある、3.SEL1Lは単独で発現すると、HRD1とは異なるユビキチンリガーゼによって速やかに分解される、4.HRD1-SEL1L複合体はERAD基質の分解速度を調節している、ということが明らかになった。
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