研究課題
本研究は、中心体キナーゼによるG0期(静止期)とM期(分裂期)を繋ぐ新たなシグナル伝達経路を見出し、その生理的意義を明らかにすることを目的とする。ほぼ研究計画どおり順調に進み以下の成果を得た。[1] Lats1およびLats2が中核キナーゼとして機能するHippo pathwayは転写活性化因子YAPおよびTAZを抑制することで細胞増殖を抑制し、器官サイズの制御を行うリン酸化シグナル経路である。我々が作製したLats1-ΔNノックアウト(KO)マウス由来の培養細胞(MEF)は、N末端領域が欠損したLats1蛋白質を発現し、接触阻害によるG0期停止を無視して足場非依存的に増殖した。この分子機序を明らかにするために、DNAマイクロアレイを行ったところ、興味深いことにLats2の発現が顕著に減少していることを見出した。実際、Lats1/2のリン酸化標的であるYapの抑制は解除され(Yapが安定化し、核移行する)、その標的の増殖関連遺伝子CTGFの発現が上昇していた。さらに、このMEFでは、中心体の過剰増幅と染色体分配異常、細胞質分裂の異常による多核化が頻発し、この細胞をヌードマウスに皮下注射すると明らかな腫瘍を形成した。[2] Lats1のC末端(キナーゼドメイン)欠損マウスを作製し、そのMEFでも中心体および染色体分配の異常を確認した。[3] Lats2 KO MEFについてマイクロアレイを行い、そのデータ解析から特定の遺伝子クラスターの一律な転写変動を見出した。これはLats2がエピジェネティックなクロマチン制御に関与し、発生や癌の悪性化に係る遺伝子群の発現をコントロールしていることを示唆している。[4] DNA損傷に応答してChk1キナーゼがLats2をリン酸化し活性化すると、Lats2がCdk阻害因子p21をリン酸化して、アポトーシスを引き起こすことを見出した。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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