研究概要 |
白血病関連因子MLF1と細胞がん化の関係を研究する過程で、MLF1がCOP9シグナロソーム(CSN)複合体の第3サブユニット(CSN3)と結合することにより、CSN複合体の下流で働くE3ユビキチンリガーゼCOP1の活性を抑制し、がん抑制蛋白質p53の分解を阻害して、細胞増殖を抑制することを見いだした。さらに、このMLF1-CSN-COP1経路は、DNA損傷ストレスに対して従来のDNA損傷応答修復機構を活性化するばかりでなく、オートファジーを誘導することによりがん化抑制において重要な役割を果たす応答経路である知見を得た。本研究では、COP1の機能解析を中心に、MLF1-CSN-COP1経路を介した細胞周期抑制およびオートファジーの相互調節機構が存在するのかを検証することを目的とした。 1.DNA損傷ストレスによるオートファジー誘導の検証:p53野生型のマウス線維芽細胞・ヒト細胞株にDNA損傷ストレス(紫外線照射)を負荷すると、オートファジー誘導マーカー(LC3,p62)の発現減少やドット状凝集が観察された。さらに、Atg5・Beclin1ノックダウン細胞では紫外線照射によるオートファジー誘導能は著しく阻害され、ヌードマウスへの移植により腫瘍が形成された。これらの知見から、DNA損傷ストレスは細胞周期抑制ばかりでなくオートファジーを誘導し、その阻害は発がんに繋がることを見いだした。 2.細胞周期抑制およびオートファジーにおけるMLF1-CSN-COP1経路の役割:新規COP1特異的相互作用蛋白質の一つとして、オートファジー促進因子FIP200(別名RBICC1)を同定し、COP1活性の抑制はオートファジーを促進することを見いだした。
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