研究課題/領域番号 |
22570187
|
研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
木村 義雄 香川大学, 農学部, 教授 (10243750)
|
キーワード | 粘液細菌 / 細菌型チロシンキナーゼ / Ser/Thrホスファターゼ |
研究概要 |
1.細菌型チロシンキナーゼの機能解析研究対象としているM.xanthusはグラム陰性型とグラム陽性型のチロシンキナーゼをそれぞれ1つずつ有しており、最初にグラム陽性型チロシンキナーゼBtkA(MXAN_3228)の機能解析を行った。グラム陽性型チロシンキナーゼは、レセプター型タンパク質と細胞質キナーゼがそれぞれ別のタンパク質で構成されているが、他の菌で報告されているようにBtkAはレセプタータンパク質(MXAN_3227)がないと自己リン酸化が起こらなかった。この酵素は生育期には見られず、飢餓誘導後、72時間程度で発現した。また、btkA遺伝子破壊株を作製し、その表現型を明らかにしたところ、本変異株は集合体を形成するものの熱処理及び超音波処理に対して耐性な成熟胞子を形成しなかった。成熟胞子を被うコートは数種のタンパク質と多糖から構成されており、タンパク質の組成及び量においては野生株と変異株の間では差は見られなかったが、変異株の多糖合成量において野生株のそれより、30%程度少なかった。このことから、BtkAは胞子のコートを形成する多糖の合成に関与している可能性が示唆された。 2.Ser/ThrホスファターゼPph3の機能解析:粘液細菌において真核生物のSer/Thrホスファターゼと相同性の高いホスファターゼ(Pph3)を用いて金属塩、基質結合などに関与していると推定されるアミノ酸を別のアミノ酸に置換をした変異酵素を作製し、基質及び金属塩に対するアフィニティー、反応速度などを測定し、酵素学的諸性質を検討した。その結果、金属塩の結合に重要と考えられるアミノ酸を変異させた酵素において活性が全く消失し、また、基質結合に関与しているアミノ酸を置換したところ、基質結合能の減少がみられ、これらのアミノ酸は重要な働きを有していることを確認した。また、この酵素のC末端領域を欠損した変異酵素は、比活性の増加が見られたことから、C末端領域はこの酵素の活性を阻害していることが推定され、この領域にcAMP結合領域が存在することから、cAMPが活性に何らかの影響を与えていると考えられた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目的としている酵素の諸性質の検討及び遺伝子確壊株を用いた細胞での機能解析などが順調になされており、下記の論文以外に現在、論文を3報投稿中である。
|
今後の研究の推進方策 |
引き続き、目的とする酵素の諸性質を検討するとともに遺伝子破壊株を作製して機能解析を行っていく。また、目的のキナーゼが細胞内でどのようなタンパク質を基質としているのかを明らかにすることでさらに詳細な機能解析を行っていきたい。
|