1. 細菌型チロシンキナーゼの機能解析 研究対象としているMyxococcus xanthusはグラム陰性型とグラム陽性型のチロシンキナーゼをそれぞれ1つずつ有しており、昨年度、グラム陽性型チロシンキナーゼBtkA(MXAN_3228)の機能解析を終えているので今年度はグラム陰性型チロシンキナーゼ(BtkB)の機能解析を行った。グラム陰性型チロシンキナーゼは、レセプター型タンパク質と細胞質キナーゼが1つのタンパク質で構成されており、レセプターのN末端に存在する活性化領域とキナーゼ領域を大腸菌で発現させると、自己リン酸化活性が見られた。本酵素は対数増殖期、定常期、子実体形成期初期に発現が見られた。btkB遺伝子破壊株を作製し、その表現型を野生株と比較したところ、高温での生育不良や分化の遅延が見られた。また、変異株の多糖合成量において野生株のそれより、低下がみられたことから、BtkBも菌体外多糖の合成に関与している可能性が示唆された。 2. PHPファミリーに属するチロシンホスファターゼの機能解析 最近、枯草菌で報告された細菌特有のチロシンホスファターゼであるPHPファミリーに属するPhpAの酵素学的諸性質を明らかにしたところ、本酵素は活性にMn2+やCo2+を必要とし、リン酸化ペプチド基質の酵素活性より、リン酸化チロシンを特異的に脱リン酸化する酵素であることが明らかになった。この酵素はまた、上記の細菌型チロシンキナーゼの自己リン酸化されたチロシンの脱リン酸化を触媒した。また、本遺伝子破壊株は、飢餓誘導による分化が野生株より少し早く進むこと、菌体外多糖を多く合成することなどから、BtkA及びBtkBの脱リン酸化などに作用し、本菌の菌体外多糖合成の調節に関与していると推定された。
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