研究課題
マクロファージなどの食細胞は、生体防御の最前線で病原微生物などの侵入に対処する。この防御反応で重要なのは、ファゴサイトーシスとファゴソーム成熟の過程である。いずれも細胞内オルガネラとの密接な融合反応が関わる過程であるが、特に後者の分子機構はよくわかっていない。本研究では、この過程におけるSNAP-23(膜融合装置)の新奇機能と調節機構の解明を目的とした。昨年度までに、SNAP-23のファゴソーム膜上での機能を解明するために分子内FRETの検出条件を検討してきたが、本年度は、同様のFRETプローブを用いファゴソーム膜上の動きについて解析を行った。SNAP-23のパートナー分子の候補と考えられるSNAREタンパク質をプローブと共発現し、オプソニン化ザイモサンを取り込ませ形成したファゴソーム膜上のFRET効率を解析した結果、VAMP7 (lysosome/late endosome局在)の場合に顕著な効率の亢進が見られた。これは、VAMP7がファゴソーム成熟過程でSNAP-23ととも膜融合に機能することを示唆している。今後は、VAMP7の発現抑制実験などにより、その機能を確認する予定である。これまでの結果を論文にまとめ投稿したところ、追加実験を要求されたため、新たにファゴソーム成熟過程でlysosome/late endosomeの融合を検出するシステムを構築した。LysoTracker Red(LTR)でlysosomeを染色した状態でオプソニン化ラテックスビーズをファゴサイトーシスさせ、形成したファゴソームへのLTRの蓄積(赤色蛍光の蓄積したファゴソーム)を定量することでlysosome/late endosomeの融合を解析した。SNAP-23siRNAの導入細胞について調べたところ、コントロール細胞に比べLTRファゴソームが顕著に減少していたことから、SNAP-23がこのステップの膜融合に直接関与することが明らかになった。現在、同様の方法でSNAP-23過剰発現マクロファージについても解析を行っている。
2: おおむね順調に進展している
SNAP-23の機能については現在、論文投稿中であり追加実験を行っているので、おおむね順調と考えている。また、SNAP-23のパートナー分子についてはsyntaxin11も含め、残りの期間で解析し明らかにする予定でいる。
SNAP-23の機能解明をさらに推進するため、SNAP-23のパートナー分子については、FRET解析から明らかになってきたVAMP5についても、ファゴサイトーシスとファゴソーム成熟に関する機能解析を行う。作製した抗VAMP5抗体を用いた予備実験から、VAMP5はマクロファージに比較的特異的に発現しており、マクロファージに特異的な機能を有している可能性が考えられる。また、NOX2複合体のファゴソーム膜上への集結におけるSNAP-23の機能(動体変化)を解析するため、FRETプローブ観察をさらに改良しリアルタイムでの変化を追跡できるようにする。その一つとして、蛍光寿命の測定による解析に取り組み始めている。
すべて 2012 2011
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件)
Cell Microbiol
巻: 13(in press)
DOI:10.1111/j.1462-5822.2012.01767.x
Mol Cell Proteomics
巻: 11(in press)
DOI:10.1074/mcp.M111.016378mcp.M111.016378