病原微生物などの異物は、マクロファージなどの食細胞によってファゴサイトーシスされ、殺菌、分解、代謝される。これらの一連の過程は、細胞膜と内部オルガネラとの密接な膜融合反応により進行するが、その詳細な分子機構はよくわかっていなかった。平成23年度までに、細胞膜局在のSNAREタンパク質(膜融合装置分子)の1つSNAP-23が、ファゴサイトーシスとファゴソームの成熟の両過程に機能すること、またその際のパートナー分子としてVAMP5(細胞膜)とVAMP7(lysosome膜)の関与を明らかにしてきた。 本年度は、これまでの成果を論文投稿した際に要求された実験とSNAP-23の機能的なパートナー分子の複合体形成について研究を行った。①SNAP-23の1分子FRETプローブを用いてファゴソーム膜上でのパートナー分子を検証したところ、調べた限りのVAMPファミリーではVAMP7以外に顕著なFRET効率の上昇が見られるものはなかった。②FRET解析から細胞膜上でSNAP-23と相互作用することがわかっているVAMP5について、その安定発現マクロファージを構築し機能を解析した。その結果、顕著なファゴサイトーシス効率の影響は見られなかったことから、この反応におけるSNAP-23とVAMP5との関連性は低いと考えられる。③SNAP-23のファゴソーム成熟化への関与を明らかにするため、蛍光標識デキストランを用いてファゴソームとライソゾームの融合実験系を構築した(論文改稿のため)。これにより、SNAP-23の過剰発現と発現抑制の条件、また後者についてはレスキュー実験も行い、SNAP-23がこの反応における膜融合を担う分子であることが明らかになった。
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