細胞移動は発生胚における神経冠細胞の再配置や感染部位へのマクロファージの移動、転移性腫瘍細胞の分散などに見られるように、医学的に重要で非常に高度なプロセスが統合された現象です。これまで微小管の細胞移動への関与が示唆されており、微小管は細胞移動を司るアクチン細胞骨格のダイナミクスと密接に関わっていることも明らかになってきました。細胞を進行方向に移動させるためには接着斑の形成ばかりでなく分解を促すことも必要であり、微小管は小胞輸送によって接着斑のターンオーバーに関わっている可能性があります。しかし微小管を介してどのような因子が接着斑に運搬されているのか解明されていません。本研究では、トランスゴルジ網(TGN)から微小管の核形成を促し、細胞極性ひいては細胞移動に影響を及ぼす微小管伸長端結合蛋白質CLASP2について、x線結晶解析を用いた構造機能解析を行います。平成22年度はCLASP2における2つの微小管結合ドメインについてセレノメチオニンを用いた多波長異常分散法による結晶構造決定に成功しました。現在、CLASP2の微小管結合領域の生化学的性質を明らかにするとともに、光散乱法を用いて微小管安定化機構の解析を行っています。さらに微小管結合蛋白質EB1とCLASP2との相互作用および協同的微小管安定化機構を定量的に解析しました。またCLASP2のTGN局在化に必須なGCC185結合最小領域もY2H法によって決定し、試験管内での結合を確認するとともに細胞内でドミナントネガティブにはたらくことを示しました。
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