研究課題/領域番号 |
22570193
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研究機関 | 聖マリアンナ医科大学 |
研究代表者 |
東郷 建 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 講師 (40334247)
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キーワード | 膜修復 / CREB / 一酸化窒素 / PKG |
研究概要 |
これまでの研究において、膜損傷を受けた細胞では転写因子CREBの活性化が誘起されること、それに加え、損傷を受けた細胞の近傍に位置する細胞でもCREBの活性化が誘起されることを見出してきた。更に、損傷を受けた細胞の近傍の細胞におけるCREBの活性化には、一酸化窒素(NO)が関与する細胞間情報伝達系が必要であることも見出してきた。今年度はさらにその下流の情報伝達系を検討した。 cGMP依存性プロテインキナーゼ(PKG)を阻害したところ、NOが関与する細胞間情報伝達系の阻害と同様の効果が認められた。また、NOのドナーであるNOR3をPKG阻害剤存在下で与えるとCREBのリン酸化が抑制されたが、NOR3単独の処理でCREBのリン酸化が誘起された。以上の結果から、NO-PKGの情報伝達経路が近傍の細胞におけるCREBの活性化に関与していることが明らかになった。 次に、細胞膜損傷の修復速度について検討した。まず1回目の膜損傷を与え、膜修復に要する時間を計測した。次に損傷を与えた近傍の細胞における膜修復を1回目の損傷から24時間後に解析したところ、近傍の細胞における膜修復は有意に促進されていた。また、CREBのミュータントを発現させた細胞では、このような反応が見られなかった。更に、NO-PKGの情報伝達経路を遮断して1回目の損傷を与えたところ、近傍の細胞における膜修復は促進されなかった。以上の結果から、細胞膜損傷を契機としたNO-PKGの情報伝達経路の活性化は、近傍の細胞におけるCREBの活性化を引き起こし、結果として近傍の細胞の膜修復反応を促進していることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書において提案した内容は、細胞膜損傷が誘起する細胞間情報伝達系を明らかにすることと、損傷を受けた細胞とその周りの細胞における膜修復の比較検討であった。これらの目的は「研究実績の概要」で述べた通り、当初の計画通り達成された。
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今後の研究の推進方策 |
得られた研究成果の公表が遅れているので、新年度早々に学会発表と論文の投稿を予定している。 また、研究においては、これまで検討してきた遺伝子発現を伴う長期の修復促進反応に加え、キナーゼ活性が関与する短期の修復促進反応が細胞間情報伝達系によって近傍の細胞に伝搬していくかについても検討を行い、その成果を次年度中に発表することを目指す。
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