小胞体は、分裂と融合を繰り返す動的なオルガネラである。小胞体は、連続した膜構造を持つにもかかわらずシート状とチューブ状の形態的に異なる構造を持つとともに、独立した機能を有するいくつかのサブコンパートメントを含んでいる。サブコンパートメントには、種々のオルガネラや細胞膜を構成するタンパク質群および分泌タンパク質群が合成される場である粗面小胞体、脂質の供給や毒物の代謝の場である滑面小胞体に加えて、近年明らかになってきた輸送小胞の出芽領域と考えられる領域や、小胞体で合成された変異タンパク質を留めておく領域などがある。本研究では、形態的な違いにより分布が異なるタンパク質群と機能的に異なるタンパク質群をそれぞれ蛍光タンパク質で可視化し、多色同時ライブイメージングによってそれらタンパク質の局在を明らかにし、機能欠損株での解析を組み合わせることで、形態の違い(シートとチューブ)が機能領域(輸送小胞の出芽領域)の形成へどのように関与しているかを明らかにしていく。 出芽酵母のCOPIIコートタンパク質Sec24p、Sec13p、Sec31pおよびSec16pは、輸送小胞の出芽領域ERESに共局在し、融合拡散を繰り返していることを明らかにした。また、ERESには、Sar1GTPaseも集積した。次に小胞体形態(シート状とチューブ状)に依存して局在するタンパク質群とERESの局在を比較した。ERESは、主にシート状小胞体に局在するSec12とはあまり共局在が見られなかったが、チューブ状小胞体やシート状小胞体の縁に局在し、膜の曲率を維持するReticulonタンパク質と共局在を示した。小胞体膜の曲率を維持するタンパク質を多重で欠損する株では、シート状小胞体は肥大化し、ERESが一部残った小胞体の高い曲率領域に集積したことから、ERESの局在に小胞体形態(膜曲率)が重要であることを見出した。さらに、詳細に小胞体形態を解析した結果、ERESは主に小胞体の馬鞍形領域に局在することも明らかとなった。
|