小胞体は、分裂と融合を繰り返す動的なオルガネラであり、連続した膜構造を持つにもかかわらず形態的にはシート状とチューブ状の異なる構造を持っている。それとともに、小胞体は、独立した機能を有するいくつかのサブコンパートメントを含んでいる。種々のオルガネラや細胞膜を構成するタンパク質群および分泌タンパク質群が合成される場である粗面小胞体、脂質の供給や毒物の代謝の場である滑面小胞体に加えて、近年明らかになってきた輸送小胞の出芽領域と考えられる領域や、小胞体で合成された変異タンパク質を留めておく領域などがある。本研究では、形態的な違いにより分布が異なるタンパク質群と機能的に異なるタンパク質群をそれぞれ蛍光タンパク質で可視化し、多色同時ライブイメージングによってそれらタンパク質の局在を明らかにし、機能欠損株での解析を組み合わせることで、形態の違い(シートとチューブ)が機能領域(輸送小胞の出芽領域)の形成へどのように関与しているかを明らかすることを目的に研究を遂行した。 出芽酵母S.cerevisiaeのCOPIIコートタンパク質が小胞体膜上に安定な輸送小胞の出芽領域(ERES)を形成することを明らかにした。このERESは、主に小胞体膜シート、及びチューブの辺縁の曲率の高い膜領域に局在した。小胞体膜の曲率維持に働くタンパク質群の欠損株では、ERESの分布が変化し、残存した小胞体シートの辺縁に集積することから膜の曲率がERES局在に重要なことが判明した。この結果は、J. Cell Sci.誌に発表した。
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