研究課題
本年度の目標の一つは極性化に必要であると既に他の系で報告されている遺伝子に関してさらにノックダウンを行っていくことである。Basolateral形成に重要と考えられる、Lglのノックダウンではapical面の増大が見られた。そのとき細胞が扁平化するので、細胞内のミオシンの活性がapical面積の調節に重要化と考え、ミオシンIIやそのリン酸化を行うROCKのノックダウンも行ったところ、ミオシンIIが存在しなければ、あるいはミオシンIIのリン酸化が効率よく起こらなければ、apical面積が広がってくることがわかった。また、別の観点から、apicalとbasolateralとのバランスを調節しうる要因として膜輸送による細胞膜の挿入、取込みについても検討をおこなった。16℃と言う低温の処理を行い、エンドサイトシスは起こるがエキソサイトシスとリサイクリングとを抑制された状態にするとapical面積は小さくなった。これはapical面でのエンドサイトシスとエキソサイトシスがapical面積の調節に重要であるが、エキソサイトシスが阻害されたためにエンドサイトシスが優勢となり、apical面積が小さくなったと解釈される。さらにR2/7では分裂期に入ると明確な極性が見られなくなることがわかった。これらの特徴はR2/7にαカテニンを導入し、正常な上皮シートを形成できるようにした細胞では全く見られず、細胞間接着は上皮極性を乱すようなさまざまな要因に対して、極性の保持を支える役割があるということが明確になった。
2: おおむね順調に進展している
新たな知見が次々にえられているため。ただし、本研究課題で用いている培養細胞株が各種蛍光蛋白質の安定した発現には不適当であることがわかってきたので、ライブイメージングから多くのデータを取ることに関しては計画を縮小し、替わりに12に記すような細胞外基質からのシグナルについての解析を加えていきたい。
本研究課題を遂行しながら、上皮極性をもっとも最初に決定するはずの、細胞外基質からのシグナルというものが、実はあまりはっきりしていないことがわかった。現在のところ、細胞外基質からシグナルが細胞の中に入ってしまってからのことを研究しているが、この初期段階のシグナルについて解析を行わないと全体の理解を深めることができないと考えるに至った。今後は細胞外基質からのシグナルについても解析を行っていきたい。
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