研究課題/領域番号 |
22570197
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
大石 勲 独立行政法人産業技術総合研究所, 健康工学研究部門, 研究員 (50314472)
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キーワード | ゼブラフィッシュ / 形態形成 / 組織再生 / シグナル伝達 / Wnt / Ror / ケモカイン / 心臓再生 |
研究概要 |
Wntは細胞の増殖、分化、極性、移動を制御し、形態形成や組織再生等の多様な機構を調節する分子であり、そのシグナル伝達機構の解明は発生の理解、疾患の病態の理解や治療に繋がると考えられる。Wntシグナルは多岐に渡り、多くのシグナル伝達因子を含むとともに様々なシグナル伝達系と協調することが知られている。本年度はゼブラフィッシュを用いて受容体型チロシンキナーゼRorを介するWntシグナルならびに心臓再生過程におけるWnt及び関連シグナルの関与の可能性について検討した。ゼブラフィッシュ受精卵のRor2遺伝子をモルフォリノアンチセンスオリゴにて抑制するとWntシグナルの活性化が認められ、頭蓋顔面形成、付属肢形成、左右形成の異常が認められる。これら形態形成異常の一部は神経堤細胞の異常に起因すると予想されたが、Ror2抑制個体における初期神経堤細胞マーカーの異常は認められず、Ror2が神経堤細胞の初期分化過程に関与せず、それ以降の移動、成熟過程に関わることが示された。また、ゼブラフィッシュ個体は組織損傷時に旺盛な再生能力を示すが、心臓の部分切除や穿刺による損傷時にWntシグナルが活性化することを見出した。これを受けて、心臓損傷後の再生応答に関わるシグナル伝達について明らかにする目的で、心臓の損傷後に損傷部位に発現誘導される新たな分子の探索を試みた。その結果、ケモカインであるCXCLl2bとその受容体CXCR4aが損傷部位に発現誘導されることを見出した。心臓損傷後のゼブラフィッシュをCXCR4シグナル阻害剤を含む水槽中で飼育すると心臓の再生が顕著に抑制されることからCXCR4aを介するシグナルが再生応答に必須の役割を担うと考えられる。ケモカインシグナルの再生応答における分子メカニズムに興味が持たれるとともに、Wntシグナルとの関連についても解析が待たれる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ゼブラフィッシュ形態形成、組織形成ならびに再生過程におけるRor、Wntシグナルおよびこれらに関連するシグナルの機能、役割が明らかにされつつあるため。
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今後の研究の推進方策 |
特に心臓再生過程で新たに見出されたシグナルの機能並びにWntシグナルの関連について解析を進めるとともに、形態形成、組織形成、再生過程におけるWnt,Rorと関連する分子機構の探索を試みる。
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