研究課題
生物進化の過程で遺伝子ネットワーク(GRN)における特定の発生調節遺伝子の役割が変化したことはあきらかである。本研究はこのようなGRN改編をもたらす分子基盤の理解をめざしている。研究系として棘皮動物の幼生神経系(頂器官)と骨片形成中胚葉、および、それらに関与する発生調節遺伝子に注目し、器官・胚葉形成GRNにおける発生調節遺伝子の役割の進化と、GRN改編の分子機構解明にむけた以下の3課題を行った。【課題1:頂器官でのTbr発現は棘皮動物進化過程の「いつ」失われたか?】発生調節遺伝子Tbrの発現喪失のタイミングを理解するため、半索動物ミサキギボシムシ、原始的棘皮動物・トリノアシからTbrの単離を目指した。トリノアシTbrは部分断片が得られたので、発現パターン解析も同時に進めている。昨年度全長cDNAを単離した原始的ウニ・キダリスについて詳細な発現パターン解析を行った結果、プルテウス幼生期までの間に頂器官領域でのTbr発現は認められなかった。【課題2:ヨツアナカシパン頂器官におけるTbr発現「再獲得」機構の解明と役割の検討】ヨツアナカシパン頂器官におけるTbr発現をコントロールするシスエレメントの同定をめざし、Tbrの上流1kbのゲノムの転写調節能を検討した。その結果、この領域には胚全体で強い転写活性化能があることが明らかになった。また、Tbrの頂器官形成過程における役割の解明をめざし、Tbrモルフォリノオリゴによる遺伝子機能阻害実験を開始した。【課題3:ウニ小割球-骨片形成細胞GRNの再編の機構】我々の最近の研究から、小割球-骨片形成細胞GRNにもGRN再編による種間多様性の存在が示唆された。そこで様々なウニ類の骨片形成細胞分化機構の比較GRN研究を開始した。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Development, Growth and Differentiation
巻: 54 ページ: 2 566-578
DOI: 10.1111/j.1440-169X.2012.01360.x
青森自然誌研究
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