研究概要 |
本研究は視覚の中枢としての中脳視蓋が網膜から位置特異的投射を受けるための、極性形成、層形成のメカニズムを明らかにすることを目的としている。En2は視蓋の発生初期(E2)に、視蓋原基に後ろとしての性質を付与する。さらにEn2は分泌されて直接鼻側網膜線維を引きつけることがin vitroで示された。網膜視蓋投射形成中のE10でEn2は視蓋のSGFS, g-j層に発現しているので、in vivoでもそのような機能があるかどうかを調べる目的でE5.5にEn2をエレクトロポレーションによりトランスフェクトした。組織学的検索を行うと、En2発現細胞は本来En2を発現しているSGFS, g層よりも深層にしか見られず、浅層には存在しなかった。GFPのみをトランスフェクトした細胞は視蓋全層に見られた。そこで、pT2K-TRE-En2, pT2K-CAGGS-rtTA, pCAGGS-T2TPをE1.5に同時にトランスフェクトした。En2はDox投与3時間くらいで発現する。Dox投与によりE8.5からEn2を発現させ、経時的に観察すると、Dox投与12時間後にはEn2発現細胞は視蓋浅層にも見られたが、24時間後には浅層からEn2発現細胞は消え、g層よりも深層にしか見られなかった。動画撮影により観察すると、Dox投与直後に浅層に見られたEn2発現細胞は深層にバックしていく様子が見られた。コントロールでは深層に行く細胞は見られなかった。統計を取ると、En2発現細胞はSGFS, i層に戻っていた。En2を強制発現すると、En2発現細胞は視蓋表層からSGFS, g-j層に戻ってしまうことから、En2が鼻側網膜線維を吸引するかどうかはわからないが、En2は視蓋の成熟期に、SGFS, g-j層で発現し、En2発現細胞をそこに移動させつなぎ止める役割を果たしているという結果が得られた。
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