研究概要 |
①PRDM12の解析に関して、表皮―境界規定に関連づけて更に解析を進めた。野生型PRDM12 mRNAを異所的に発現させたると、プラコードと隣接する神経堤領域の分化抑制が表現型、転写レベルで観察された。興味深いことに、ヒストンメチル化ドメイン変異PRDM12、DNA結合領域欠損PRDM12を強制発現させた場合では、野生型PRDM12で引き起こされる神経堤の分化抑制が見られなかった。このことから、PRDM12がPR/SETドメインとZNFドメインを介して、neural crest形成遺伝子を抑制することで、プラコードの領域化を引き起こしている可能性が示唆された。 ②Wnt阻害因子dkk, BMP阻害因子tBR注入によるプラコード遺伝子が発現する最適条件を詳細に検討した。既に汎プラコード遺伝子six1は、tBR700pg, dkk50pg注入時に最も多く発現することが分かっているが、他の様々なプラコードマーカー、神経堤マーカー、神経板マーカーなどの発現の変化を詳細に検討すると、以外にも、これらもほぼ同様の挙動を示すことが明らかとなった。これらの結果は、プラコード領域が、Wnt・BMP両シグナルの非常に微妙な差によって規定されていることを示唆する。以上の結果より、当初は本年度に新規遺伝子探索に入る予定であったが、むしろシグナリングと境界規定の仕組みをより詳細に解析を行った方がよいとの判断に至り、現在も、より細かな条件設定をすることで、上記の作業仮説を検討している。 ③ Xnr3の発現による神経・表皮境界への影響に関する解析に関しては、Xnr3の過剰発現胚における各種神経マーカーの発現を解析し、やはりXnr3の過剰発現により特異的なパターン変化を引き起こすことを明らかにした。本研究内容については、Int.J.Dev.Biol.に掲載予定である。
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