研究課題/領域番号 |
22570206
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
坂井 雅夫 鹿児島大学, 大学院・理工学研究科(理学系), 教授 (40162268)
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キーワード | アフリカツメガエル / Wnt / 小胞体 / lineage tracer / n-β-galactosidase / chordin mRNA / in situ hybridization |
研究概要 |
これまでに、Wnt(Xwnt8)が作用する時、Wntタンパク質はmRNAを注入された細胞内だけに存在すること、小胞体貯留シグナルKDELを付加したときもWntは背側化を引き起こすので、これが注入細胞の小胞体で働くことが示唆された。 しかしながら、このWntの作用は、微量に周辺に分泌されたWntタンパク質が隣及び自らの細胞に働きかけて引き起こされている可能性は否定できない。そこで、Wnt mRNAを細胞に注入するときに同時に細胞追跡のために、核局在シグナルを持つβ-galactosidase (n-β-galactosidase) mRNAを注入して注入細胞を追跡し、さらに背側化した細胞で強い発現を示すchordinのin situ hybridizationをおこなうことで、Wnt mRNAを注入された細胞だけで背側化が起こっているかを調べた。基本的には我々の予測通り、注入された細胞(n-β-galactosidaseの組織化学で染色される)だけでchordinの発現が見られたが、例外的にn-β-galactosidaseの非染色領域でchordinが染色されることもあった。これは、n-β-galactosidaseが十分に発色されない領域でもWntタンパク質が十分に細胞内に存在するからであると考え、第一、第二卵割面の近傍にn-β-galactosidaseとXwnt8のmRNAを共注入することで、注入境界をはっきりさせようと考えた。この境界の確からしさを確認する為、Alexa fluor 488d extranを共注入したところ、Alexa fluor 488の蛍光染色パターンとn-β-galactosidaseの染色パターンが一致する領域が認められた。現在、このようなサンプルでのchordin in sith hybridizationをおこなっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
この研究では、(1)Wntタンパク質がmRNAを注入された細胞にだけあること(2)KDELを付加し、小胞体に貯留されるformとしたWntも背側化能を失わないこと(3)chordin mRNAの発現によって示される背側化がWntmRNAを注入された細胞の範囲だけで起こり、周りの細胞には伝わらないことの3つを根拠として、Wntが細胞内で働く事を示そうとした。(1)(2)に関しては既に確認済みで(3)を確定するための実験を行っており、この実験も順調に遂行できている。
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今後の研究の推進方策 |
現在、chordin mRNAの発現によって示される背側化がWnt mRNAを注入された細胞の範囲だけで起こり、周りの細胞には伝わらないことを示すために、8細胞期のGNE(1細胞期に植物極側を20-40%除去した胚で、これ自体はchordihnを発現しないことがわかっている)の1細胞にXwnt8、n-β-galactosidase、Alexa fluor 488 dextranを共注入してn-β-galactosidase、Alexa fluor 488の染色パターンが一致した胚を得、chordinの発現がこれらの染色と完全に一致することを示そうとしている。これまでの実験でもn-β-galactosidaseとchordinの発現が1つの細胞レベルできれいに一致した像は得られているので、現在おこなっている実験系でもそうなることを期待している。
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